塩の邑「山塩小僧」山間でゆっくり丁寧に、時間をかけてお塩をつくる!
皆さん、こんにちは!
こちらの方々は、高知県四万十町の山間でゆっくり丁寧に、時間をかけてお塩をつくる「塩の邑」森澤宏夫さんと百合香さん。
「良いものを売りたい、作りたい」ではなく、「自然の力を伝えたい」という気持ちで作られたお塩は複雑で優しい味がします。
塩の邑「山塩小僧」
塩の邑で作られたお塩の名前は「土佐の山塩小僧」。愛称は「山塩」。
パッケージに描かれたワンパクそうな子供は「山で育ったワンパクな子供」というイメージを版画で描いたデザイン。
版画ならではの風合いから素朴さと力強さを感じます。
何度も何度も使う。
海から運んできた海水を鹹水(かんすい。塩を作るための海水)ハウスの中に噴射し、太陽光と風の力で水分を飛ばし、塩分濃度を海水の3~5倍まで高めます。
そこからホースで隣の結晶ハウスへ。
結晶ハウスには木箱がずらりと並んでおり、この木箱1つ1つに先ほどの海水を入れて、塩の結晶を取り出します。木箱の内側は塩の結晶が見やすいように黒く塗られ、ガラス板が貼られています。
毎日毎日木箱の中の塩を攪拌してごみを取り除きつつ、水分の蒸発具合を見て、海水を追加していきます。
結晶化しては、溶かす。これを何度も繰り返して、お塩が出来ていきます。
森澤さんは、毎日攪拌しながら、木箱に残った海水の量と、気温などを考えて、1箱ずつ海水を注ぎ足していきます。
「足し過ぎてもいかんし、少なかったら、カピカピになって後の始末が大変になるけん、場所によって(海水を)足す量を変えとるんです。夏やったらほぼ毎日海水を入れよりますけど、冬はたまにしか入れてません」
一度できた塩に海水を足して、塩を溶かし、塩分濃度が濃くなった海水から塩を作ってを繰り返します。
飽和して、塩が溶け切らなくなることもありますが、おいしいお塩を作るために欠かせない手間と時間です。
熱中症注意!入っていいのは10時まで!
塩ができる木箱は、木で作られたビニールハウスの中にあります。
そのビニールハウスは、杉のハウスと桧のハウスの2種類あり、杉ハウスより桧ハウスのほうが少し背が高いんです。
と言いますのも、杉ハウスは木箱が2段構成、桧ハウスは3段構成になっているからなんです。
そして、ハウスの高さが変わってくると、ハウスの室温も変わってきます。杉ハウスは60℃、桧ハウスは70℃まで上がるそうです。
取材に伺ったのは、7月末。天気は晴れ。
昨日まで雨ばっかりの天気でしたので、久々の晴れ間に「晴れた~!」と浮かれていた私に忠告したい。
車の中でも窓全開か、クーラーをかけないと過ごせない気温なのに、締め切ったビニールハウスに入らないかんということを…
「あっついですね~」というと、「あっついで~。普段やったら、朝から10時までやないと仕事にならんし、ふらついて危険やけんよ、10時以降は入らんがよ」と話す森澤さん。
冬でも暑くなるというハウス、夏場は朝の涼しい時間か、夕方の陽が落ちてきた時間帯のどちらかしか入らない(というか、暑くて入れない)そうです。
再結晶を繰り返した塩に惚れました。
森澤さんは山で塩を作り始めて20年。
塩作りのきっかけは、「美味しい塩に感動したから」。
今から25~6年前、当時農業改良普及員だった森澤さんは、海で塩作りをしていたご友人の塩を食べて、「食べてこんなに美味しい、味のする塩があるんや」と感動したそうです。
「普通に塩を食べても何とも思わんでしょ?だから、その時食べた塩はよっぽど美味しかったんやと思うわ」
感動した塩を自分も作ってみたいと試行錯誤しながら作ってきました。
塩を作っていく中で分かったことは、森澤さんが感動したあの塩は、再結晶を繰り返して出来た塩だったんじゃないかということ。
普通の塩を作るのではなく、ゆっくり再結晶を繰り返すことで、にがりが混ざり、「海の味が強くなって、コクのある塩ができる」と森澤さんは話します。
それができるのが「山」だったんです。
山での塩作りは海での塩作りよりゆっくりと時間をかけて出来ていきます。その中で、海水中のミネラルなどを含みながら海の味がする塩が結晶化していきます。
森澤さんは試行錯誤している中で、気付いたことがあるといいます。それは、「塩の味に微妙な違いができる」こと。
塩の味の違いは、ハウスの室温に関係あるのではないかと森澤さんは話します。
室温が変わると、結晶化する速度が変わり、結果的に、ミネラルなどの含まれる量が変わってくるのだとか。
冬の杉ハウスの下段でゆっくりできた塩と、夏の桧ハウスの上段ではやくできた塩では、味がだいぶ違うそうです。結晶化が早い塩は、塩味が強くあっさりした塩になり、結晶化がゆっくりな塩は、にがりと海の味が強く、コクのある複雑な味の塩になるそうです。
人によって好みが違いますので、森澤さんが美味しいと考えるバランスでブレンドして、「山塩小僧」として販売しているんだそうです。
だいぶ前に一度お話を伺ったときに、夏の塩と冬の塩を食べ比べさせていただいたことがありまして。個人的には、冬のゆっくり結晶化した塩の方が好みでした!
自然のものをそのまま届けたい。
20年間塩を作り続けてきた森澤さんは、今何を考えながら塩の世話をしているのかな、と思い尋ねてみると、「いいものを届けないかんとか、美味しいものを作らないかんとか、そういう気負いはなく、ただ食べる人のことを思って作っていたいなぁと思うよね」とのこと。
百合香さんは、「海って身近にあるもの、自然にあるものでしょう?その自然がもつ力というか、エネルギーを伝えたい、届けたいと思います」と話してくださいました。
自分たちが良いもの、美味しいものを作るのではなく、買ってくれた人が美味しいと思えるものを、自然のものを作りたい、届けたい。
おまけ
木が朽ちてきて、表面がふわっとなるらしいんですが、森澤さん曰く、「木の中の微生物によって発酵してる」から。
「醤油樽とかと一緒で、発酵する力が塩作りにも大事やと思うんよ」
軽く触れるとほろほろっとはがれて、ふわふわなんですよ。不思議…