四万十発ブランド豚!ジューシーな脂の甘さ・赤身の旨みをご堪能あれ
こんにちは!
皆さんにとって「身近な養豚場」はどこですか?
…と訊かれても、なかなか無いですよね。
今回お邪魔した四国デュロックファームさんは、「身近な養豚場」だと感じる高知県民が結構多いと思います。
というのも、四万十町内の加工直売所&BBQ場「デュロックランド」や、高知市内の飲食店「豚バルデュロック」など、農場直営のお店もやっていらっしゃるから。
そしてどの店舗も、ちょっとアメリカンな感じでおしゃれ!
周りの人からも「デュロック行って飲んできた~」と聞くことがあります。
しかし養豚というと、全く知らない世界。
1万頭以上の豚を飼育する若き2代目・佐竹宣昭さんに、たくさんお話を伺ってきました!
生産者の腕が光る!「四万十ポーク」
四万十町窪川地区は昔から養豚の盛んな地域で、今では窪川養豚協会に属する4軒の生産者が「四万十ポーク」というブランド豚を飼育・出荷しています。
四万十ポークは年間3万頭ほどの出荷があり、高知県内で生産される豚の75%前後を占めているのだそうです。もちろん県内トップシェア!
さらに四万十ポークの中には
・麦豚
・米豚
・芋豚
といった種類があり、お肉の味にもそれぞれ特徴があります。
これは四万十ポークとして基礎配合を統一した飼料に、最終的にプラスする飼料が生産者ごとに異なるから。そのプラスする飼料から、「米豚」「芋豚」とネーミングが変わるようです。
養豚家さんたちのこだわり、腕の見せどころなんですね。
デュロックファームさんが手がけるのは「芋豚」。
プラスする飼料として、食品製造会社から出た副産物を使っています。
副産物というのは例えばパンのみみや、高知名物・芋けんぴの売り物にならない小さいものなどです。
佐竹さん 「麦や芋を与えると脂も甘くなるし、肉の味が良くなるんです。お菓子とかパンの副産物って、要するに麦とか芋。そういうものを積極的に使っているのはうちの強みですね」
しかも、経費の中でも割合の大きい飼料コストを抑えることもできるんだそうです。
副産物を出す側・使う側にもメリットがあることで、しっかり継続できそうな取り組みですよね。
最近よく聞くSDGs(持続可能な開発目標)の「つくる責任つかう責任」という項目が頭をよぎり、まさか身近な養豚場ですでにそのような取り組みが実行されているとは・・・と、意外で嬉しく、誇らしい気持ちになりました。
効率よりも味!こだわりの飼育期間
ところで、やっぱり「どんな味のお肉なのか?」が気になりますよね!
佐竹さん「うちの豚肉はジューシーで、脂の甘み・赤身の旨みが乗っているのが大きな特長です」
――脂が甘いはよく聞きますが、赤身が美味しいとは珍しいですね!
その理由の1つが、飼育期間。
一般的な豚の飼育期間が180日のところ、デュロックファームでは210日です。
本当は機械的に180日で管理すればもっと成績(生産性)が上がるところ、時間をかけてゆっくり育てることで、赤肉の部分にもしっかり味が乗るんだそうです。
――効率より味をとっちゅうってことですね
佐竹さん「そうです(キッパリ)」
その誇らしげな表情が、ずっと印象に残っています。
私も取材後、家でうす切りのロースをしゃぶしゃぶにしてみました。
お肉の味をしっかり味わうために、1枚目は何も付けずにぱくり。
「!」
脂も赤身もしっかり旨みがあるのに豚臭さやしつこさがなく、あと口はあっさり!!
いや、やっぱりとても美味しいお肉でした。ちなみに贈答用とかではなく、普通にスーパーに出ているものです。
大きめのうす切りが6枚入っていたパックだったのに、ぱくぱくと一気に完食。2枚くらい試食したら、あとは夕食にと思っていたのに…(笑)
デュロックファームの歴史
「デュロック」とは、アメリカ原産の豚の種類のこと。
品質もよく味もいいということで、1970年代ごろから日本でも広まったのだそうです。
窪川でもデュロック種を飼育していこうと、10軒前後の養豚農家が集まってできたのがデュロックファームのはじまり。
佐竹さんがお父さんに代わり、2代目として養豚に携わってから20年近くになるそうです。
佐竹さんはもともと養豚業を継ぐ予定は無く、高校卒業後は専門学校を経て、7年ほど建設会社に勤めます。
そして家庭も持って少し経った頃、「長男やきそろそろ家に帰ろうかな、豚も飼いゆうし」という感じでご実家に戻ります。27歳の時です。
その頃は”近所の方が数人お手伝いに来てくれるぐらい”だったそうで、従業員数も飼育頭数も今よりずっと少ない農場でした。
経験ゼロから、県下一の養豚場に!
家業ではあったものの、養豚や農場経営のノウハウはほとんど無かった佐竹さん。
業界誌を読み漁ったり、関連機関が主催する集まりに参加したり、というところから始めたそうです。何しろよく分からないので、参加してみたら飼料業者向けの会だった!なんてことも。
また経営も習得すべく、こちらも勉強会に出たり、疑問に思うことは都度調べて学んでいって・・・という修行のような日々が続きます。
しんどいこともとても多かったろうと思うのですが、自分でやる!と腹を括っている佐竹さん。代表者の名義を変更する前から、「代表取締役」と書いた名刺を勝手に作って配りまくったそうです!
しかも途中で「農事組合法人は”代表理事”ぞ」とツッコミが入るも、「あ、そうなんや」と作り直してまた配ったというエピソードも。
「そんなことも分からんのに、とにかくやりよったねー」と目を細めていました(笑)。
その行動力たるや!!
そうしてまさに手探り状態から、今や高知県下で一番の規模にデュロックファームを育て上げました。
佐竹さんのお話からはとにかく1つ1つ、やれることをちゃんとやってきたことが伝わります。言うは易しですが、「ちゃんとやり続ける」って難しい。
何かにトライしようと思っても必要なスキルをあれこれ考えてしまい、なかなか最初の一歩が踏み出せない…という経験がある人も少なくないと思います(私もその1人)。
佐竹さんは業界誌を読むところから始め、養豚のこと、経費や税金など経営のこと…。
すべて知らない状態から「そのときにできること」を積み重ねていて、たぶん今でさえその最中なのかもしれません。
地域の若者が、ここで働くことを誇れるように
今後について考えていることも、いくつか教えてもらいました。
まずは豚舎の建て替え。
今の豚舎は築年数がだいぶ経っているため、3年くらいかけて建て替える計画を立てています。
次に、もっといい堆肥を作ること。
農家などの生産者に販売している堆肥を、ただフンを乾燥させるのではなく、もっと質の良い作物が育つようにと考えているそうです。
中でも印象的だったのは、「地元雇用をしっかりしていきたい」ということ。
若い人が地元で就職でき、安定して働ける。
雰囲気も素敵なお店を作ったのは、その点も考えてのことだといいます。
佐竹さん「生産現場で働いてくれる子がコンパとかして、勤め先がデュロックやって言うたら”ああ、あのお店の”って話になるかなって。それまで「豚飼いのところに行ってます」としか言えんかったのが、胸も張れるろうし」
その親心、グッときます。
そして農場でお会いした数人の若い職員の方が、にこやかにちょっと楽しそうにしていたのを思い出したのでした。