こんにちは!

ここ数年は暖冬の影響か、温かい冬の四万十町でした。

さて、秋ごろの稲刈りのあわただしい季節が過ぎるころ、四万十町では次なる収穫に向けて農家さんはいそいそと準備をします。

その次なる収穫とは??

「生姜」です。

高知県は生姜の生産量が日本一ですが、四万十町が実は県内で最も生姜の生産量が多いのです。この季節になると、生姜畑の横には収穫用の水色やオレンジ、黄色などのカラフルなコンテナが高く積み上がります。そんな生姜王国四万十町で、生姜をメインの作物として村上農園を経営している村上智之さんに生姜についてお話を伺いました。

農薬・化学肥料不使用の高品質な生姜

村上さんが生姜の栽培を始めたのは今から23年前のこと。

大学卒業後は化粧品の会社で約7年間開発の仕事に携わっていました。

しかし、大学生の時から持っていた
「自分で納得いくものを作り、販売したい」
という思いが強くなり、一念発起して脱サラして四万十町へとやってきました。

四万十町へ来てからは、何か所かの農業法人で研修を受けながらノウハウを蓄積していきました。

水のきれいさをはじめとする恵まれた環境に加え、生姜の栽培が自分に向いていると感じた村上さんは「質のいい生姜を作る」ことを念頭に様々な工夫を凝らします。

生姜の持っちゅう美味しさを引き出したいがよ

栽培するうえで生姜は多湿を嫌うけれど、乾燥しすぎる環境も苦手。

また、生姜は根が少ない上に細くて弱いため、少し傷がつくだけでそこから菌が入って病気になってしまうとても繊細な作物です。

この画像で生姜の根っこは〇で囲んだところなのですが、数本の太い根っことひょろひょろっとした細い根っこがあるだけ。

思っていたよりも少ないですね!!

一般的には生姜は農薬などを使用しないで育てるのは大変難しいとされる作物ですが、村上さんは

・輪作:栽培する畑を毎年変える
・生姜栽培の前後に別の作物を栽培する
・肥料をあげすぎない

などの工夫により農薬や化学肥料を使わないで高品質な生姜を栽培できるようになりました。

また、村上さんの大きな発見の一つとして

「生姜は土で育つ」

ということに気づいたことがこの生姜づくりのキモになっていました。

生姜は通常、大きくなってくると土から顔を出してきますが、これを放っておいて日光に当たってしまうと病気になってしまうので、土の上に稲わらやケイントップという資材をかぶせて生姜が露出しないように育てます。

しかし、
「従来のやり方よりもいい方法があるのではないか?」
と考えた村上さんは様々な実験の末、生姜の様子をこまめに観察し、上の写真のように生姜が土から顔を出したらほんの少しだけ土をかぶせてじっくりと育てるようになりました。

この作業は収穫までに4回ほど繰り返す必要があるので、とても手間がかかるのですが

「肥料をやると大きくなるけんど、病気にもなりやすいき」

と言い、この方法で生姜の栽培を続けています。

手作業での収穫

四万十川のほとりの生姜畑で、この日は4人で作業をしていました。

生姜は大きさがバラバラだったり、ちょっと力が加わると折れてしまうため、機械化があまり進んでいない、手作業が多い作物です。

少し生姜の収穫の様子をお伝えすると。。。。

まずは茎を引っ張って生姜を土から引っこ抜きます。

以前生姜のバイト(キツイけど結構時給がいいです)をしたときに一通りの作業をしましたが、この引っこ抜く作業が一番しんどい作業でした。

続いて、生姜についた土を払い落としつつ、根っこをぷちぷちとちぎった後でハサミを使って茎をチョキチョキと切り落とします。

これをコンテナにパズルのように生姜の形に合わせて詰め込んだら

トラックに積み込みです!

収穫したら壕(ごう)へGo!!

収穫した後、村上さんが
「壕(ごう)も見に来る??」
と声をかけてくれたので、ついていきました。

壕とは山肌に横穴を掘った野菜の貯蔵設備で、中は年中一定の温度(10度ほど)を保てるので、生姜の保存に最適です。

この日の夕方の気温は5度前後だったので、この中に入るととても温かく感じましたが、夏に入ると涼しく感じるそうです。

奥まで続く一本道。

トラックから生姜のコンテナを下ろし、壕の中に運び込みます。

そして、途中にある横道に順次生姜を下ろしていき、今日の作業は終了です。

結構天井が低いので、約175センチの立岡は時々頭を天井に擦りながら撮影していました。

掘り出した生姜は、この壕の中で約1か月ほど保存すると、茎の部分がキレイに落ちて表面が茶色くなります。

この状態になると皆さんがスーパーとかで見かける生姜として販売できるようになります。

村上農園のこれから

村上さんに生姜の特徴を聞いてみると、

「香りと辛味が強くて、 苦みが少ないことが特徴ってよく言われるがやき」

と教えてくれました。

四万十ノのジンジャーシロップも村上さんの生姜なしでは作れないほど、味の決め手になっていますが、その評価は材料にこだわる都内の飲食店などからも
「パンチがあってほかの生姜と違う」
と大好評です。

「まだまだ生姜畑を広げていきたいし、もっと多くの人に生姜のおいしさを知ってもらいたいね」

と今後の目標についても教えてくれました。

これから寒くなる季節ですがホッと一息、ポカポカ温まる四万十町の生姜はいかがでしょうか?

年間通して畑を有効に使うため、常に野菜を栽培していて忙しい村上さんですが、会うといつも笑顔でいろいろな野菜の豆知識を教えてくれます。 今回の取材も最も忙しい生姜の収穫時期にお邪魔しましたが、「写真撮るのに止まろうか?」と気を遣ってもらって恐縮でした!が、とても楽しく取材することができました。