皆様、こんにちは。

針葉樹の深緑色と、広葉樹のもこもこした若葉色がいい感じのコントラストで、新緑の季節は山を眺めるのが楽しくなります。

さて、今回は、そんな山で作業している中平さんにお話を伺ってきました!

薪を売り始めたきっかけは、山の保全と需要の増加

高知県は、森林率が83.4%と全国1位の森林率を誇ります。そんな高知県ですが、植林が進み、スギ・ヒノキの多い山が大半です。しかし、四万十町十和は、合併前の十和村だった頃、原木椎茸の生産に力を入れようと、スギ・ヒノキではなく、広葉樹を残していきました。そのおかげで、今でも広葉樹がたくさんあります。

もちろん、スギ・ヒノキを植林している部分もありますが、これらは主に材木として市場からの需要も大きいため、ある程度の大きさになった木から切りだされていきます。

反対に、広葉樹は、材木としての需要は少なく、間伐しても、切り倒して山に放置。もしくは、間伐にもコストがかかってしまったり、何らかの理由で山の手入れができなくなったりといった理由で、間伐すらされない所もありました。これを見た中平さんは、広葉樹をどうにか有効活用できないかと考えたそうです。

そんな頃に、四万十市で自伐林業に取り組む団体「シマントモリモリ団」代表の宮崎聖さんに「自伐(型)林業っていうのがあるよ」と教えられてから、中平さんは自伐(型)林業の道へ進むことに。

 

ここでちょっと小話。

<自伐(型)林業について>
林業は、「施行委託型林業」と「自伐林業」、「自伐型林業」に大きく分けられます。
「施行委託型林業」とは、山の保有者が森林組合などに林業の施行と経営を委託するもので、大人数で大規模に行われます。
「自伐林業」は、自分の山から自分で樹を切り出すもので、「自伐型林業」は、委託を受けて、他人の山から樹を切り出すものを指しています。

「自伐林業」・「自伐型林業」は、どちらも少人数かつ小規模で作業が行われ、山に負担をかけない林業が特徴的です。

中平さんは、ご自分の山の樹を切り出す時もありますが、地域の方から「ここの樹を切ってほしい」という依頼を受けることもあり、このブログの中では、「自伐(型)林業」と書かせていただきますね。

そして、宮崎さんから「売り先はあるから、薪を作ってほしい」という話もあり、薪の販売をスタートされたのだそうです。

近年、アウトドアの人気が上がってきているのも影響しているかもしれませんね。

薪のメインは、シイ

中平さん曰く、十和の広葉樹の中で一番多いのがシイ。
昔は、身近な木材として、薪や炭へ加工され、活用されていました。しかし、今では、薪や炭を使う機会も人も少なくなり、シイは巨木化する一方でした。

そこで、シイの薪として販売し始めました。

薪の種類は、シイ、ナラ、サクラなど。
シイは半年~1年ほど、ならやサクラは1年以上乾燥させています。

シイは乾燥させすぎると、品質が悪くなってしまうため、乾燥は1年ほどにしているんだそうです。

そして、薪を乾燥させるときは、わざと雨に濡らすそうです。
乾燥させたいのに?と思った私ですが、雨に濡らすと乾燥するときに薪の中の水分も一緒に蒸発していくんだそうで、効率的に乾燥させることができるんだとか。

この方法は、薪を作る人の間では主流だそうですが、十和地域の方々はあまりしないそうです。
私の実家でも薪を使用していますが、わざと雨に濡らすという方法は、初めて知りました…!

広葉樹の薪を売る訳

広葉樹に限らず、森林は間伐が行われないと、山の中まで太陽光が入らなくなり、低木が育ちにくく、森林の世代交代(更新)が行われないんだそうです。

特に広葉樹は、日の当たる所へどんどんと枝をのばしていきますので、定期的に間伐してあげないと、他の樹にとっても、山にとってもメリットがなく、山が荒れてしまうんです。
また、広葉樹は一度切っても、切り株からまた芽吹き、成長していきます。

そして、十和地域には、椎茸産業が盛んだった時期に植えたナラやクヌギ、シイがたくさんあります。

特に、シイは十和の土壌・気候にあっているようですね。シイの花が咲くころには、山々に淡い黄緑色の花を咲かせたシイが目立ちます。

切っても生えてくるので、薪として売るには、まさに“適材”。クヌギなどと比べて火持ちは劣りますが、火付きが良く、淡い色の炎で綺麗に燃えます。

シンプルかつ美しいデザインのベンチ「アドベンチー」

中平さんは、薪の他に「アドベンチー」というベンチも販売しています。

「アドベンチー」とは、和歌山県の会社が作った、新しい形のベンチ。
「アドベンチャー」と「ベンチ」を掛け合わせた名前がついたこのベンチは、シンプルかつ美しいデザインで、様々なシーンで活用できます。

中平さんが切り出した樹を製材屋さんである程度の形に加工してもらい、最終調整は中平さんが行います。

フレームにぴったりはまるように、材木を1本1本微調整していきます。

シンプルかつ美しいデザインは、色々な場面に馴染み、木のぬくもりを添えてくれます。

林業に触れたきっかけは、じぶんと同い年の木の存在。

林業を始めて、5年目の中平さん。

ですが、林業に触れたきっかけは、自分と同い年の樹の存在。

中平さんが生まれたときに、おじい様が植林してくれたそうです。

年月は流れ、中平さんが家を建てようかという話になった時、「植林された樹が家を建てれるくらいに大きくなっている」ということだったので、おじい様と一緒に樹を切り出してきたんだそうです。

そこで、おじい様が工夫して樹を切り出す作業が意外とおもしろかったそうで、「純粋に楽しくて、林業っておもしろいなと思ったのがきっかけ」だったそうです。

自分と同い年の樹があって、それで自分の家を建てられるっていうのは、なんだかいいなぁと思いました。

自伐(型)林業は自由で、自在で、自立できる林業

「イメージ通りに切り倒せて、スムーズに運び出せたときは、やった!と思いますね」

にこにこと話す中平さん。作業場所によって、切り出す順番、作業道を作る場所、樹の切り倒す方向、樹の重心の向き等が異なってきます。

少しのミスが大きな怪我につながりかねない仕事ですので、考える時間の方が切り倒している時間よりも圧倒的に長いそうです。

「自伐(型)林業は、自分でやる林業であるけれど、自由で、自在で、自立できる林業なんですよ。自分の体調と相談しながら作業を進めれますし、林業の傍ら、農業とかもできますし、田舎で生きていくのに適した職業だと思います。」

中平さんのこの言葉に、林業で、地域で生きていくコツを垣間見たような気持ちになりました。