こんにちは!

日課である朝の散歩、6時でも陽射しがきつい日々が続いています。6時より前にするか、諦めて汗ダラダラで歩くか迷っていますが…たぶん諦める方になりそうです。

さて今回は、ある日の夕方に西日をがんがん浴びながら、四万十町窪川地区の米穀店「岡田商店」さんに向かいました。

昔から朝食はごはん派の私、そういえば「お米のプロ」にお話を聞くのは初めて!
美味しいお米のこと、教えてください!

大正時代から「美味しいお米をお客さんに」

岡田商店さんの創業は大正時代(正確な年数は不明とのこと)。
創業当時の写真には、店先に米俵が積まれている様子が映されています。

お米屋さんとは、文字通り「お米を売っているお店」のこと。でも、具体的にどんなことをするお仕事なんでしょうか?
知ってるようで知らないお米屋さんの仕事について、4代目となる岡田憲典さんにお聞きしました。

「簡単にいうと、農家さんからお米を仕入れて、この精米機で精米して販売するのが主な仕事です。精米する前の「玄米」を販売することもあります」

お米を仕入れるのは、四万十町内で長くお付き合いのある農家さんから。
高齢化で農業をやめてしまう方もいる一方で、岡田さんと同年代の方が継いだりしてがんばってくれているそうです。

お店の中には、人の背丈よりもだいぶ高く、存在感たっぷりの精米機があります。

こちらでは精米中の摩擦などによる熱を抑え、低温のまま精米できる機械を使用。熱によって美味しさが損なわれることを防げるんだそうです。

この精米機に玄米を投入すると精米されたお米が出てくるわけですが、その際に玄米に混ざっていた小石や砕けてしまったお米は選り分けられ、別の出口から出てきます。

玄米。これを精米機に投入。

精米途中で弾かれた小石や、虫食い・白濁したお米

精米はその後「色彩選別機」にかけ、虫食いなどで色が変わっているお米を取り除き、商品として出せるお米を厳選していきます。

岡田さんはさらに目視でも、そういった”ダメなお米”が混入していないかチェックされているそうです。

「やりすぎって言われることもあるんですけど(笑)お客さんが食べたときにちょっとでも美味しいようにと思って」

割れ米や砕けて小さくなったお米。

精米されたきれいなお米!

「仁井田米」の専門販売店!

四万十町の中でも旧窪川町地区で生産されるお米は「仁井田米(にいだまい)」と呼ばれ、ブランド米として高知県内で大人気。
標高が高いことによる朝夕の激しい寒暖差、そして四万十川の清流で育まれた仁井田米は他とはひと味違う美味しさで、私も好きなお米です。

岡田商店さんは、この仁井田米専門の販売店です。仁井田米の中でも、取り扱っている品種はこちら。

・にこまる
・ヒノヒカリ
・香るお米

「香るお米」はその名のとおり「香り米(かおりまい)」の一種で、「十和錦(とおわにしき)」と地元で呼ばれているお米を採用しています。

香り米とは高知県では普通に見かけるお米で、炊飯中から部屋に充満するほどの強い香りを放ちます。それどころか、稲が育っているときから水田周辺には香りがすると聞いたことも!

どんな香りか言葉で表現するのが難しいんですが・・・すごく強いお米の香りというか、人によっては「ポップコーンみたい」という、香ばしくて何ともいい匂い。嗅覚にそれほど自信がなくても、食べると「あ、香り米だ!」と分かります。

―「にこまる」や「ヒノヒカリ」も含めて、品種ごとに味が違ったりするんですか?

「香りの強弱、硬さ・柔らかさが違います。例えば「にこまる」は柔らかいもちもちした食感、といったように食べてみると違いがよく分かりますよ」

―一番人気のお米はどれになるんでしょうか?

「『ヒノヒカリ』と『香るお米』を50:50でブレンドしたお米が一番人気です。

ただ香り米って県内の方には馴染みがあるんですが、県外の方には匂いの好き嫌いがはっきり分かれます。初めての方は小容量から扱っていますので、それをお試しいただくのがいいかもしれません。

今、県外の方には『にこまる』が人気ですね。にこまるは無洗米もありますよ」

お米をどうブレンドするか?も、お米屋さんの腕の見せどころ。
香り米ってすごく美味しいので、未体験の方はぜひこの”渾身のブレンド米”を食べてみてください!!

(ちなみに無洗米とは「通常よりもっと精米したお米」で、そのおかげで研がなくてもよい状態になっているものだそうです。何となく、ザブザブ洗ってくれているのかと思っていました。聞いてよかった…)

4代目は元・自動車ディーラー勤務

岡田さんは大学卒業から2020年までの13年間、自動車のディーラーで営業をやってこられたそうです。
穏やかな雰囲気で、誠実かつ優しい語り口が印象的なので、きっとお客様に愛される営業マンだったんだろうなーと想像できます。

―13年というと結構なキャリアだと思いますが、家業を継ぐというのはいつから考えていたんですか?

「そうですね、ゆくゆくはと。やっぱり代々ここで米屋としてずっと仕事をしてきたので…これを終わらせるのは嫌やな、継ぎたいという気持ちはすごくありました」

車の営業をされているときから、このお仕事に役に立つようなことをという意識はありました?

「仕事がお米屋さんに変わっても、お客さんとのお付き合いというのは変わりませんから。お客さんとの関わり、そういうところは前の仕事の経験がすごく役立っているように思います」

そうおっしゃるように、ディーラー時代のお客様が何人も「あなたから買うきね」とお米の顧客にもなってくれているそうです。前職からしっかり実直にお客様に向き合ってきた賜物ですね。

ただし前はあまり力仕事がなかったため、30kgの米袋を何十も扱う今はちょっと腰に来ているそうです。腰を労わりつつ、がんばってほしいです!^ ^;

受け継がれる「お客さんが一番」のマインド

そうして2020年4月から家業に携わり始め、1年余りになる岡田さん。
今は3代目のお父様と一緒に、岡田商店の暖簾を守っています。

インタビューの最後に登場していただいたお父様に「お店のこだわり」をお尋ねしたところ、

お客さんが一番。
お客さんが食べて美味しいように尽くすこと。

と、非常に明快なお答えをいただきました。
商品であるお米についてのお返事があるかなーと思っていましたが、間髪入れず返ってきたこの言葉。

聞けば40年ほど前は、虫食い米の除去はすべて手作業。
まさに気の遠くなるような工程ですが、お客さんが食べて美味しいようにと手を抜かずにやっておられたそうです。

岡田さんも、取材中に何度も「お客さんが食べて美味しいように」とおっしゃっていました。

これまで培ってきたお客様との誠実なコミュニケーション力も相まって、「お客さんが一番」のマインドがまたしっかりと受け継がれていくに違いありません。

絶品のお餅、四万十町にお越しの際はぜひ!

取材中、「うちは米屋と一緒に餅屋もやってます」と振舞っていただいたのは、手のひらに乗るサイズの芋もち。
4代目のお母様お手製だそうで、これが冗談抜きに絶品!

予想を超えてくる美味しさにびっくりしてお母様に伺うと、「契約農家さんあっての美味しいお餅。あと、こだわりは餡子!」と元気に答えてくれました。明るい素敵なお母様です。

お餅は町内の道の駅やスーパーに置いてあるということなので、四万十町に来られたらぜひ探してみてください!一食の価値ありですよー!

美味しい仁井田米は窪川地区の保育園にも卸していると聞き、子どもたちが「これがお米の味」と覚えて育つのってすごくいいなと思いました。岡田さんは子どもたちがずっと住みたいまちになるようにと、地域おこしの活動にも力を入れています。窪川の子どもたち、幸せだなあ。