皆様、こんにちは。
夕食中に、ペチ、パタタ…と小さい音が聞こえてきました。
何かおるな~と思っていたら、急にこっちに向かって飛んでくる黒っぽい何かが!

しかも、私の背中に止まったのです。
母に「どこにおる~?取ってよー!」と懇願するも、「あぁ、バッタやわ。はよ外行って、はたいてきなさい」と一言。

バッタが飛ばないようにそろ~り歩きながらベランダに出て、洋服をバタバタ。
背中にバッタがいないことを確認してもらい、夕食を再開したことでした。

翌朝、「夜中にバッタっぽいのを見かけたで。」という衝撃発言に、私は耳に栓をして知らんぷりを決め込んだライターです(笑)

バッタの話はさておき、秋の足音が近づいている、四万十。
秋が近づくと楽しみになるのが、そう「新栗」です!

そんな栗の一年をちょこちょこ追いかけきました。
2021年の新栗情報を交えつつ、栗についてお話させてください。

栗の準備は、真冬から。

栗の一年は、冬から始まります。
栗の実も葉も無くなった栗の木に、翌年の秋に向けての準備をしていきます。

それが「剪定」です。

栗の木自身は、春の芽吹きに備えて眠るこの期間に、無駄な枝を切り落としていきます。
せっかくたくさん葉を出しても、太陽の光が当たらなければ、もったいないですよね。
なので、枝の数、伸びる向き、枝のしなり具合、芽がついている量などを見て、剪定していきます。

今年伸びた枝から芽吹く葉をイメージして剪定することで、効率的に太陽の光を浴びて光合成を行うことができるようになるのです。

花より葉っぱ

さて、春になると、栗の葉が芽吹きます。

サクラや梅など、春に花咲く木はたくさんありますが、栗は先に葉が芽吹きます。
小さい芽の中に葉がしまい込まれていて、日を追うごとにスルスルと葉が出てくるので、手品のようですよ!

数週間のうちに、緑色のしっかりとした葉になって、光合成をしていきます。

そして、栗の花の芽が出てくるのは、5月の頭ごろ。

そのおよそ2週間後、栗の花が芽吹き、花が咲くと独特の香りが漂います。
この花のピューっと長い部分に咲いているのが雄花、花の根元、枝に一番近い所にあるのが雌花です。

受粉すると、雄花が枯れていき、とげとげ頭の三角形が残っていきます。
これが栗の赤ちゃんです。

ここから、1ヵ月

2ヶ月

3ヶ月

ついに、早生(わせ)栗はイガが割れはじめました!

そして、8月23日。新栗の出荷が始まりました!
こちらが、2021年の新栗。

今穫れている栗は「早生」。
早生、中生(なかて)、晩生(おくて)と少しずつ穫れる栗が変わり、少しずつ風味も良くなって、丸々とした栗が穫れてきます。
過去最大は、昨年10月6日に穫れた77g!全国平均(およそ18g)に近い栗と比べると、一目瞭然ですよね!

ちなみに、今年の栗は早生でも51g!

今年は、大きな台風の上陸もなく、未熟の栗がたくさん落ちている様子も見られないですし、50g超の早生栗が穫れましたし、「今年は豊作か~!?」と期待しております。

まんまる栗は何故できる?

栗の先生に栗の木について色々教えていただいたことをお話していきます。

まず、栗の中でも、私たちが食べている部分。あれ、じつは、「種」なのです。
じゃあ「実」は?「皮」は?となりますが、「実」は鬼皮(おにかわ)と言って茶色く硬い皮。そして「皮」は、イガの部分になるんですって!

この話を聞いて、大切な種を守るためのイガなのか!と納得したことでした。

イガに守られて、まんまるに育った栗は、ある日、ポロっとイガから抜け出します。これを「剥離(はくり)」というんですが、栗の木が「この種は十分に詰まったから、イガからはがそう!」という決断をします。
この行為は子孫を残すための活動なのですが、ここでポイントなのが「十分に詰まった種をはがす」というところ。

これには、大きく2つの理由があります。
1つは、「移動距離」です。
イガから剥離した種は、当然のことながら自力で動くことはできません。
でも、親の木の真下で芽吹くよりは、できるだけ遠くに行った方が後々生き残る可能性だって大きくなってきますよね。だから、栗に限らず植物は種を遠くへ遠くへと運ぶ手段を考えるわけです。
そして、栗はどういう形の種が一番遠くへ行けるかと考えた末、球体という答えに辿り着きました。
ぺったんこな種よりもまんまるの種の方が、ころころ転がっていきますもの。
できるだけ遠くで種が発芽できるように、種がまんまるになるまで養分を溜め続けるのです。

そして2つ目は、「害虫対策」です。
栗には、種に卵を植え付ける害虫がいます。
しかも、ややこしいことに、外からでは中に害虫がいるのかどうかも分からないのです。
種に植え付けられた幼虫は、のんびりと種の中に蓄えられたデンプンを食べていき、大きくなったら、中から穴を開けて出ていきます。虫がいると分かったころには、時すでに遅し、なのです。
これを避ける方法は、卵を植え付けるスペースをなくすこと。つまり、種の中に隙間なく、めいっぱいデンプンで満たすことです。

まんまるな種になってから剥離させるのは、子孫繁栄のために避けては通れない道だったのです。

栗の力を活かす「剪定」

種をデンプンで満たすために必要になってくるのが、光合成。つまり、水と光と空気です。
水と光、これを調整するのが難しいのです。日照り、大雨など、自然に左右されてしまう部分なので、人間の手ではどうしようもありません。
唯一、人間が手をかけられる栗のお世話が「剪定」なのです。

葉が密集してしまうと、表面の葉にしか光が当たらず、下の方の葉は光合成ができなくなってしまいます。
そうなると、栗は「来年はもっと光が当たるように、上を目指そう」と、次の年は上向きに伸ばす枝を優先させます。
栗が優先させた枝は、太く芽も大きくて均等に並んでいるので、人間が見ても「切るには惜しい枝」だと思ってしまいます。
しかし、上向きの枝ばかりを残すと、どんどん栗の木が高くなっていき、年々手入れをするのが大変になってしまいます。

なので、密集している栗の枝を間引く剪定をすることで、栗に「もう上に延ばさなくてもいいのかも。光合成の養分を種に回した方が良いかな」と思わせて、まんまる栗を作ってもらう準備をするのです。

冬の選定のおかげもあって、順調に育っているしまんと地栗。
お菓子になって皆様のお手元にお届けできるまで、もう少しお待ちください…!