「トンカン トンカン」

リズミカルな音が工房から聞こえてきます。

大通りから少し入った自宅に隣接している工房からは、朝から金属を鍛える音が響いていました。

本日は十和の鍛冶屋さんを取材してきました!

以前はふるさと納税や道の駅とおわで出品されていましたが体調を崩してしまい、お休みしていました。最近では少し体調が良くなったとのことで、「打つから見にこんかえ?」と言っていただいたので、工房にお邪魔させていただきました!

松村さんは現在82歳。15歳のころから鍛冶屋として働いています。現在で2代目。松村さんのお父さんから十和の鍛冶屋は始まっています。

本日は依頼のあった「鉈」(ナタ)の制作。2つのパーツがどのように鉈になっていくのか、初めて見ましたが大変面白かったです!

俺はまだ半人前で。

長年鉄を鍛えてきた松村さんはそう語ります。お父さんの代はすごかったとも。先代が作った鉈や包丁などは、30年経った今でも壊れずに残っているそうです!そういえば私のおじいちゃんもここの鉈を持っていました!

「今でも親父の作った物と比べられるがよ。」
と松村さんは笑顔。

「一生やっても納得のいくもんは出来ん!俺もここまでやってきて、ああこんな感じかなってやぁっと思うようになってきたがやき。」

これまで培ってきた目と感覚は私が想像するよりも素晴らしいと思いますし、松村さんは職人として一人前なんだと思っていました。しかし自分はまだ半人前だとひかえめ。

「それは自分が決めるんやなくて、お客さんが決めることやき。俺は性格がいい加減やきね~。」

いい加減だと言いつつも、炉から鉄を取りだし何度も何度も鍛えるその姿にそんな影は見られません。良いものを作ろうとする姿がとてもかっこよかったです!あれなに?これなに?と作業の合間に私が質問しても、快く教えてくれました。

沢山の道具は先代からず~っと使っているもの。

自分で手入れして、大事に、大事に使っています。
そのため柄の持ち手の部分は木が削れて形が変わっていました!

「これでもほとんどは弟子にやった(あげた)がぞ。」

こんなに色々あるのに、これ以上にまだ道具があるが?!とびっくり。素人目には何がどの工程に使うのか見当もつきません・・・!

弟子には半人前が
教えることになるがぞって言うたわ。

松村さんには菊池さんというお弟子さんが1名居られます。弟子入りをお願いされた時には、お年も召されて弟子をとるには年齢的に遅かったそう。

教えるのにも体力がいるのですが、身体的に難しくなってきた為、弟子はとらんと思っていたそうです。

「菊池にお前は半人前から教わるんやき、半人前にしかならんがぞ言うたわ。そしたら「それでも良い、やる!」って言うがぞ。それに「ここに(十和に)住みたい、十和の人間になりたい」言うてねぇ・・・。」

菊池さんの熱意に負け、弟子として迎えることになりました。一生やっても半人前。松村さんは菊池さんに大変やぞ、苦労するぞと言っていたんだと思います。生半可な覚悟でやる世界じゃありません。それでも、やる。やりたいんや。そんな思いが松村さんのお話から伝わってきました。

(聞いている間なんだかちょっとうるっと来たのは仕方ないと思います。)

「大変やけど、菊池さん来てくれてうれしいね~」

「ん?・・・そうやにゃあ。」

お話しする松村さんはなんだか嬉しそうでした。

現在は菊池さんは同地域の別の場所に工場を構えており、そちらで鍛錬中だそうです。4~5年やっても一人前にはなれん!菊池さんがこれからどのようになっていくのか楽しみですね!そしてどんな想いで今打っているのか、今度お話を伺いたいですね。

最後に

今日の制作は鉈の形にするまでの工程のみでした。これからさらに整えて研磨され、製品になっていくそうです。

初めて鍛冶屋さんを生で見ましたが、見ていてとても面白かったです!技術もそうですが、力がいる作業が多く、素人目で見ても大変。松村さんも作業は半日までが限界だとおっしゃっていました。
この十和地区にこんな素晴らしいものがあることを嬉しく思うとともに、次の世代へと受け継がれていく光景を垣間見ることが出来たようで感動した私なのでした。

農具や家庭の包丁まで制作し、昔から十和を支えてきました。その一つを今日知ることができて、また一つ勉強になりました!地元に住んでいてもまだまだ知らないことが一杯だ・・・! これからも地元探索もっともっとしていきたいと思います!!