高知県で唯一!!ヴァイオリン職人のいるまち

こんにちは!
みなさん、四万十町は好きですか?私は知るたびに嬉しくなるような、素敵なコト・モノ・ヒトが盛りだくさんの四万十町が大好きです。
その魅力はもちろん、出会えたときの感激までしっかり伝えられたらいいなと思っています。どうぞよろしくお願いします!
高知県で唯一のヴァイオリン工房
今回お伺いしたのは、四万十町の窪川地区にある「高橋ヴァイオリン工房」さん。
代表の高橋尚也さんは、高知県で唯一のヴァイオリン職人。イタリアで10年間の修行を積んでから、故郷の窪川地区で工房を開きました。奥様と1歳半になる息子さん、三毛猫の「うめ」ちゃんと暮らしながら、黙々と製作に取り組まれています。
寡黙なヴァイオリン職人は日々ここで何を目指し、どんなヴァイオリンを製作しているのか?
訊きたいことてんこもりで、工房のドアを開けました!
500年前から形が変わらない楽器。職人の特徴はどこに見いだせるのか?
ヴァイオリンは西暦1500年代に完成したといわれ、以来、約500年間(!)その形を変えていません。たしかに、ギターみたいにいろんな形のヴァイオリンて見たことないですよね。材質は工房によって多少違うものの、それでも数種類に限られています。
— そんな限られた条件で、職人さんの特徴ってどこに出るんですか?
「分かりやすいところは3つですね。ネックの渦巻部分。f字孔。あと、ここの…」
そう言って示してくれたのは、胴を正面から見て4つある、ぐっと尖ったコーナーの部分。2方向から来る線がぴったり1点に揃うところに、その職人の色が出るのだそうです。
2本の黒いラインが等間隔にピッと頂点を描くさまに、見とれてしまいませんか?
ネックの渦巻きもf字孔も手作業で削られたとは思えないほど精巧で、眺めていて本当に飽きませんでした。
高橋さんは、「自分は特徴を出そうとはしてなくて。でも人が見たら、こいつはいつもこうなってるって分かるみたい」と控えめ。その実直さが、そのまま佇まいとして表れているように感じました。
イタリアから四万十町に移っても、やれることをやるだけ
高橋さんはイタリア時代の多くをヴァイオリン製造の聖地クレモナで過ごし、世界的な巨匠・モラッシー親子の師事を受けました。今でも作品を見てもらって、指導を受けることがあるそうです。
— ところで、ヴァイオリンの材料は「木」ですよね。気温や湿度の影響を受けそうですが、イタリアと四万十町は気候が似ちゅうがですか?
「クレモナの夏は乾燥しちょって、秋冬が雨雪霧でずっとジメジメ。湿度が日本と真逆やね。梅雨と2月の乾燥しすぎるときは湿度管理するけど、神経質になりすぎてもだめなんで。だいたいのことは細かく気にせんで大丈夫。製作中は<今回どうしようかな>の連続。意外と材が薄いぞ、じゃあ次どうしようかなとか。でも、普通に音楽かけたりしながら作ってますよ。」
フラットで自然体。
経験と技術があるからこそ環境の差なんかに言い訳を求めず、自分がやれることをやる人なんだなと印象的でした。
すべて手作業。美しい、のため息が出る
数十種類もの道具を使い分け、手作業で作られるヴァイオリン。中でも「横板を専用のアイロンにあてて曲げる工程」は神経を使うそうで、ここが終わるとほっとするのだそう。
製材の目利きが重要で「若い頃やと分かってなかったき、今見たらびっくりするような材を仕入れよったね」と笑います。
好きなのは「表裏の板を削る工程」
粗削りから、つるつるに仕上げるまで全部が好きだそうで…うん、横から見るときれいなアーチ状になってます。
「おった工房では、師匠がそこをバンバン弟子にやらせるがよ。なんでこんなえいところ人にやらせるんやろ、自分は絶対人にはやらさんと思いよったね(笑)」
そんな工程を経て生まれるヴァイオリンは高橋さんの息遣いや気迫を纏っていて、とても美しいんです。もう削りかすさえ美しくて、何度もため息が出ます。クレモナで師に「ノートをとるな。そんなことをするから覚えられない」「とにかく数を作れ」と言われた青年は、四万十町で今、こんなに美しいヴァイオリンを生み出しています。
夢は、死ぬまでつくること
最後に「夢は?」と訊いてみました。
「やっぱり、死ぬまでつくり続けることです。自分の楽器だけで発表会をしたいとか、賞を取るとかあるんでしょうけど、そういうのは過程でしかない。」
ずっと真面目ながらも和やかに答えてくれた高橋さん。このときが一番、真剣な眼差しでした。
高橋ヴァイオリン工房では、試奏も大歓迎(事前連絡要)。
ヴィオラ、チェロも製作していて演奏レッスンも受けられるので、興味のある方はぜひ問い合わせてみてくださいね。